イエダニ

分類上の位置 ダニ目、中気門亜目、オオサシダニ科
学    名 Ornithonyssus bacoti (HIRST)
和    名 イエダニ
英    名 Tropical rat mite

 

 形態
 雌:胴長0.7mm内外。吸血すると丸く膨大し、体色も赤から黒色に変化し、形態観察が困難になる。背板は1枚で細長く、後端部はより細くなり丸味を帯びる。背板毛は18対で後部の1対は微毛である。胴部背腹両側の体板外は綱毛で密におおわれる。胸板は四角形で3対の毛を持つ。生殖腹板は後方ほど細く、後端はややとがる。生殖腹板上の毛は1対。肛板も後部が細くなり3本の毛を有す。鋏角は細長く、鋏指には歯はない。
 雄:やや小形で0.5mm内外。全腹板は1枚に融合し、脚後方からほぼ同じ幅で続く。トリサシダニO. sylviarum(CANESTRINT FANZAGO)は本種によく似るが、胴背板がより幅広く、胴部背面板外および胴部腹面の毛が少なく、胸板上には毛が2対である。また雄の全腹板は肛門の前方で明らかに細くくびれることで区別できる。

 生態・習性
 イエダニはドブネズミやクマネズミ、他のげっ歯類の外部寄生虫である。ネズミの巣やその周辺に群がっていて、ネズミより吸血をする。大発生したときや、ネズミが巣を捨てたり、宿主が死亡したりした場合、周辺に分散してヒトからも吸血するようになる。ネズミからはせいぜい1頭当たり0.11〜0.19個体の寄生しか見られない(田中ら、1963)が、これは吸血後は巣などにもぐり込んでいるからであろう。
 イエダニは卵→幼虫→第1若虫→第2若虫→成虫と発育していくが、吸血するのは幼虫期・第1若虫期・成虫期であり、最も盛んに吸血するのは第1若虫で雌成虫がこれにつぐ。雄はそれほど吸血が活発ではないようである。発育期間は非常に短く山田(1936)によると8月下旬3.5〜4日、9月下旬5.5〜6日、11月上旬16〜21日。一方Ska1iy et al(1949)では11〜16日と報告されている。雌の生存期間は62〜88日でこの間に平均11回121個も産卵し、未吸血でも15日間生存できる。冬期の生存期間は100日以上にもなる。雌成虫は吸血後、交尾なしに発育卵が産卵でき、単為生殖では雄が発育する。有性生殖では雌雄の成虫が生じる。
 人が吸血されるとかゆみは数時間続き、刺咬部には発赤丘疹が残る。子供や女性が被害を受けやすい。

 駆除法
 ネズミ駆除と、死体および巣の発見と焼却処分が大切で、平行して殺虫剤を散布する。ダイアジノン、スミチオン、マラサイオン、バイテックス、シアホス、DDVP等の油剤、10倍希釈乳剤を残留噴霧する。これに平行して、これら油剤を煙霧あるいは燻煙剤を用いるとより一層効果的である。

 薬剤に対する感受性
 平社(1959)はイエダニに対して各種の薬剤を試験している。その結果によるとDiazinonは0.1%以上で100%の致死を得ており、0.01%でも90%以上の致死率を得ている。Malathionでは0.1%で99%、lindaneは1%で99%の効力があるがDiazinonやMalathionより殺ダニ力は低く、DDDやDieldrinは効果は低かったと報告されている。
 スミチオン、バイテックス粉剤、0.3%ピレトリン、1.5%ビベロニルブトキサイド混合剤、更にカルバメート系殺虫剤も効果が高いと言われる。

 


ホソツメダニ

分類上の位置 ダニ目、前気門亜目、ツメダニ科
学    名 Cheyletus eruditus(SCHRANK
和    名 ホソツメダニ
英    名 Cheyletid mite

 

 形態
 雌:体長0.7〜0.8mm内外の淡赤橙色。胴体部は卵形で顎体部が前方に突出している。2枚の背板を持ち、前背板側縁部に4本の毛を有する。後背板は縦長い四角形で、側縁部に3対の毛を有する。顎体部背面のM字状周気管はよく発達している。触肢は太くて長い。爪は触肢末端部の櫛状毛よりやや長く、基部には2個のコブ状飾爪(突起)を有する。櫛状毛は外側のものが長く16個の櫛歯を持つ。第I脚末端節のソレニジオンは細長い。
 雄:雌よりも小型で、前背板上の毛は側縁部の4対の他に後部中央に2対の毛がある。背板上の毛はすべて短い。触肢は時に強大化しているものもある。第I脚末端節のソレニジオンは雌のものより細長く節の半分ほどの長さにもなり、基部には補助毛を欠く。
 フトツメダニCheyletus fortis OUDEMANSとクワガタツメダニCheyletus malaccensis OUDEMANSは本種によく似るが、これら2種は第IV脚腿節(Femur)に毛が1本しかをいことで区別できる。またフトツメダニとクワガタツメダニの識別は、フトツメダニの爪の飾爪が1コブであるのに対して、後者はコブ状と板状の2つを有する点で区別できる。屋内普通種のアシナガツメダニCheletomorpha lepidopterum(SHAW)は第I脚が特に細長いことと、背板に通常型の側縁毛以外に前背板2対、後背板3対の菌糸状中央毛があることで区別される。

 習性・生態
 ツメダニ類はケナガコナダニやサヤアシニクダニなどのコナダニ類を盛んに捕食することが知られている。穀物貯蔵庫ではコナダニの駆除にツメダニが導入された例さえある(HUGHES、1976)。中田(1971)のケナガコナダニで飼育した観察によると雌の生まれる経過と雄の生まれる発育段階に差があり、雄の生まれる過程には第二若虫期を欠くという。雌は受精卵から、雄は未受精卵から生じると報告されている。雌の発育日数は卵期3日、幼虫期3日、第一若虫期2日、第二若虫期4日で卵から成雌になるまで計12日。雄の場合は卵期3日、幼虫期3日、第一若中期4日と計10日間で雌よりも短い。成雌は27℃で1日に10個前後産卵し、2週間ほど産み続けるものもある。卵は通常1ヶ所にまとめて産みつけられ、卵を守るような行動をとるのに、閉鎖的な環境におかれると自分の卵を喰ったり、ツメダニどうしの共喰いもよくする。成虫の寿命は27℃で1ヶ月前後、低温だと寿命は伸びる。コナダニ類の発生する場所ならどこにでも発生し、食品、屋内の塵、タタミ、家畜小屋、倉庫、小動物や小鳥の巣に見られ、人を刺し皮疹を起こす一番の容疑者である。

 薬剤に対する感受性
 ツメダニに対しての殺虫剤の効力試験は全く行なわれていないのが現状である。従って個々の薬剤に対する感受性の比較はできないが、従来タタミに発生したダニ駆除に使用されているFenthion, Fenitrothion, Malathion, Diazion, DDVP, Resmethrin等で充分駆除できるものと思われる。




コナヒョウヒダニ

分類上の位置 ダニ目、無気門亜目、チリダニ科
学    名 Dermatophagoides farinae HUGHES
和    名 コナヒョウヒダニ
英    名 American house dust mite

 

 形態
 淡褐色の比較的短い卵形で、胴長0.4mm内外である。
雌:前体部の背板以外は細線紋理で覆われている。細線紋理は前半は水平で後半は前方に凸状に走る。前体部背板は後1/3が強く細まるが顕著なくびれはない。背面には前体部に長毛が1対ある。他の背毛は小さい。腹面にも細線紋理が主に横に走り、第III脚とIV脚の間に生殖域がある。後端部に2対の長毛がある。III脚よりIV脚の方がやや長い。
雄:やや雌より小形で前胴体背板の後側縁は角ばる。後体部後端にも不規則な背板がある。III脚がIV脚よりも明らかに大きくて長い。ヤケヒョウヒダニDermatophagoides pteronyssinus(TROUESSART)はコナヒョウヒダニによく似るが前胴体背板両側の直線紋理は主として縦に走り、第III脚がIV脚よりやや長いことより区別できる。

 生態・習性
 室内塵から最も普通に見られるダニである。配合飼料、食品、医薬品、動物やその巣にも見られる。日本の室内塵からはチリダニ類5種が知られているが、この内ヤケヒョウヒダニ、トヤチリダニ、コナヒョウヒダニの3種が優占種となる。食性は塵の中の他のダニや昆虫の脚や破片、それに人のフケであろう。大島(1971)によるとコナヒョウヒダニの発育期間は20℃では60〜65日、25℃では23〜24日、30℃では16〜17日。雌の産卵期間は18〜56日間産卵し1日平均3.8〜4.0個体、67〜101個を産卵。雌の生存期間は22〜103日、雄では14〜62日間生存。これに対してヤケヒョウヒダニは発育期間が20℃では17.7日、25℃では12.6日、30℃では10.8日とコナヒョウヒダニより繁殖率はやや高いようである。ヒョウヒダニ類は虫咬症の原因種であるとともにそれ以上に喘息を引き起こすアレルゲンとして重視されている。

 薬剤に対する感受性
 各種の薬剤に対してコナダニ類よりも感受性が高く、その効果が著しい。林・他(1977)によると各種薬剤の効力は次表のようである。
 コナヒョウヒダニはBaytex、Resmethrin、Diazinanに対して感受性が高い。またピレスロイド系のPhenothrin(スミスリン)とResmethrin(クリスロン)の使用でも高い駆除効果を認めた例がある。物理的を駆除法はケナガコナダニに準ずる。